« アンケートって素晴らしい! | トップページ | ぷうたのぼやき »

そうぞうせかい 『フェイ』

物語は突然生まれて動き始めるものだ。
例えば、ある住宅の窓から見える一枚の絵。
子供が描いた夢の世界。
虹色の小川が流れ、さまざまな色の硝子玉を実らせた木々があちこちに立ち、
花の妖精達が駆け回る足元には柔らかな笑みを浮かべる花々が咲き乱れている。
必死に野ウサギの背にしがみつく風の妖精。
リスと力試しをする小太りの樫の妖精。
そこには、子供の夢と自由な想像力がたくさん詰め込まれていた。

「大ばば様ぁ~」
「たいへんです~」
双子の朝露の妖精が息を切らしながら、森の長の元に飛んできた。
「どうしたんだい?そんなにあわてて」
森の長は薬草作りの手を休め、双子の妖精をその胸に受け止める。
「おもしろい色の実が生りました!」
「金色(こんじき)なの!はじめて見る色なのよ!」
双子の妖精は目をキラキラさせながら森の長を見上げた。
「金色の実・・・・」
ほんの一瞬、森の長の瞳が曇る。
「二人とも、大ばばにその実をみせてくれるかい」
森の長の優しい微笑みに、双子は得意げに鼻を膨らませた。
「うん!」
「こっちよ!」
双子の妖精に手を引かれると森の長の身体が浮き上がり、三人はそよ風の流れに乗って森の奥へと吸い込まれて行った。

「これは、希望の妖精の繭だね」
金色の実を見つめて森の長は言った。
「見ていてごらん、もうすぐ生まれるから」
不思議そうに金色の実を見つめる妖精たちの頭を優しく撫でながら、森の長は呪文を唱える。
すると金色の実が小刻みに震えだし、金色の光を零しながら実が割れた。
「きれいな妖精」
「大ばば様、希望の妖精ってどんなお仕事をするの?」
森の長は、金色の実から生まれ出た小さな妖精を手のひらに受け止めた。
「希望の妖精はね、人間の世界に大きな絶望が現れる時に生を与えられるのよ」
「人間?人間の世界でお仕事をするの?」
「かわいそう、人間ってとても危険なんでしょ?」
双子の妖精の瞳に捕らえられ、手のひらの妖精は羽を丸めてうずくまる。
森の長が怯える妖精に向かってそっと息を吹きかけた。
その息は小さな妖精の身体に纏わりつき、そして見る間に幼き身体を美しい成体へと変えていく。
妖精の成長を見届けた森の長は一度眼を閉じ、次に優しい眼差しを希望の妖精に向けた。
「お前の名はフェイ・・・・お行きなさい、フェイ」
フェイと呼ばれた妖精は森の長に一礼すると、自分を捕らえていた双子の妖精に微笑む。
「私の務めは人間の希望を束ねる事。さようなら、朝露の子供達」
フェイは青空の遥か遠くを見つめると、迷うことなく飛び立った。
Jpegsaizu

|

« アンケートって素晴らしい! | トップページ | ぷうたのぼやき »

趣味」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/507003/41723178

この記事へのトラックバック一覧です: そうぞうせかい 『フェイ』:

« アンケートって素晴らしい! | トップページ | ぷうたのぼやき »